邱培其 | 2026 年 4 月 2 日
本記事は『AIAG-VDA SPC 2026 新版シリーズ』の第二回であり、8 種類の管理図と 5 つの統計分析ツールの原理・公式・適用シーン・選定ロジックを体系的に解説します。すべての内容は AIAG-VDA SPC Manual 1st Edition (2026) イエローブックの原文に基づいています。
シリーズ記事
第一回:AIAG-VDA SPC 2026 新版重点解説(Cpk/Ppk 定義の変更、異常判定ルール)
第二回:SPC 管理図 完全ガイド(本記事)
第三回:先進的な管理図と Pearson 非正規分析
一、計量値管理図(Variables Charts)
計量値管理図は測定可能な連続データ(長さ、重量、温度、電圧など)の監視に用います。サブグループの大きさとデータ特性に応じて、異なる図表タイプを選択します。
01 平均値-範囲管理図(X̅-R Chart)
最も基本的な計量値管理図で、サブグループの大きさが通常 10 未満の状況に適用します(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.3, p.95: “usually smaller than 10”)。
- X̅ 図は工程平均のシフトを監視し、R 図は工程のばらつき(群内の散らばり)を監視します
- 管理限界:分布の分位数と標準偏差の推定値に基づいて計算します。文献では A₂、D₃、D₄ などの定数を用いて簡略表記されることが多いです(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.3, p.95: “In literature, the parameters… are often summarized in tables with different designations e.g., A2”)
- ばらつきの推定:σ̂w = R̄/d₂
適用シーン:標準偏差ではなく範囲(R)を監視したい場面に適用します(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.3: “Apply if the range is to be monitored instead of the standard deviation”)。

長所:計算が簡単で、現場のオペレーターが理解しやすい。
02 平均値-標準偏差管理図(X̅-S Chart)
サブグループの大きさ n > 10、またはより精密なばらつき推定が必要なときに使用します(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.2, p.92)。
- S 図は標準偏差 s で範囲 R を置き換え、統計的効率がより高い — 大標本では R は情報を失います
- 管理限界:UCL(X̅) = X̿ + A₃s̄;LCL(X̅) = X̿ − A₃s̄;UCL(s) = B₄s̄;LCL(s) = B₃s̄
- ばらつきの推定:σ̂w = s̄/c₄(R̄/d₂ より精密で、特に n > 10 のとき差が顕著になります)
適用シーン:半導体ウェハー厚さ、PCB はんだ接合部の高さ、精密機械加工 — 自動測定設備(CMM、AOI)が大きなサブグループを提供できる高度自動化生産ラインに適しています。

03 個別値-移動範囲管理図(I-MR Chart)
各サンプリングで測定値が 1 つしかない(n = 1)場合の唯一の選択肢です(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.5, p.101)。
- I 図は個別値 Xᵢ を監視し、MR 図は連続する観測値の移動範囲 MRᵢ = |Xᵢ − Xᵢ₋₁| を監視します
- ばらつきの推定:σ̂ = MR̄/d₂(2) = MR̄/1.128
- UCL(I) = X̄ + 3σ̂;UCL(MR) = D₄(2) × MR̄ = 3.267 × MR̄
適用シーン:破壊試験、化学分析(バッチごとに 1 結果)、長サイクル工程(1 日 1 データ)。

注意:正規分布の仮定に対してより敏感なため、まず Shapiro-Wilk または Anderson-Darling 検定を行うことを推奨します。データが非正規の場合は、Pearson 非正規管理図または Box-Cox 変換の利用を検討すべきです。
04 中央値-範囲管理図(Median-R Chart)
平均値 x̄ を中央値 x̃ で置き換えた簡略型の管理図です(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.4, p.98)。
- 計算に加算も除算も不要で、オペレーターはサブグループのデータの中から中間値を丸で囲むだけで済みます
- 中央値は外れ値に対する頑健性(robustness)が平均値より高い
- 不安定な状態への反応は X̅ 図より遅い(AIAG & VDA, 2026, §10.3.3.4: “react more slowly to unstable conditions compared to x̄-charts”)ため、感度を犠牲にして現場での利便性を得ています
- R 図の部分は X̅-R と完全に同じです

適用シーン:電卓を使わない従来型の生産ライン、教育訓練のシーン。
計量値管理図の選定意思決定
| 条件 | 推奨図表 | 理由 |
|---|---|---|
| n = 2~10 | X̅-R | 最も基本的で、現場で理解しやすい |
| n > 10 または自動測定 | X̅-S | 統計的効率がより高い |
| n = 1(破壊試験/長サイクル) | I-MR | 唯一の選択肢 |
| 計算ツールのない従来型生産ライン | Median-R | 計算不要、頑健性が高い |
二、計数値管理図(Attributes Charts)
計数値管理図は分類データまたは計数データ(合格/不合格、欠点数)の監視に用います。選択の鍵は「何を監視するか」と「サンプルサイズが固定か」という 2 つの軸にあります。
05 不適合品率管理図(p Chart)
合格/不合格の二項分類を監視し、サンプルサイズは変動可能です(AIAG & VDA, 2026, §10.3.6.2, p.117)。
- 公式:p̄ = Σdᵢ/Σnᵢ;UCL = p̄ + 3√(p̄(1−p̄)/nᵢ);LCL = max(0, p̄ − 3√(p̄(1−p̄)/nᵢ))
- 管理限界は n の変化に伴い階段状になります
- 二項分布 B(n,p) に基づき、np̄ ≥ 5 かつ n(1−p̄) ≥ 5 のとき正規近似が成り立ちます
適用シーン:IQC 受入検査、FQC 出荷検査、工程の不適合率トレンド監視。

06 不適合品数管理図(np Chart)
p 図と同じ二項分類ですが、サンプルサイズ n が一定で変化しないことを要求します(AIAG & VDA, 2026, §10.3.6.3, p.121)。
- 不適合品の数量 np を直接監視し、比率 p ではない — 現場でより直感的(「5 個不適合」のほうが「5% 不適合率」より分かりやすい)
- 管理限界は固定された水平線(サンプルに伴って変化しない)となり、p 図より読み取りが簡単です

適用シーン:固定ロット生産ライン、例えば LED パッケージング(1 バッチ 100 個)、コネクター圧着(1 バッチ 50 個)。
07 欠点数管理図(c Chart)
単一の検査単位上の欠点数を計数し、検査単位の大きさが固定です(AIAG & VDA, 2026, §10.3.6.5, p.124)。
- 重要な違い:p/np は「不適合品数」を監視し(各個体は合格か不合格のみ)、c/u は「欠点数」を監視します(各個体に複数の欠点があり得る)
- Poisson 分布に基づきます。従来の正規近似公式は UCL = c̄ + 3√c̄ ですが、2026 新版は明確に、ソフトウェアが広く使われる今日の状況では正規近似の使用を避けるべきであり、正確な Poisson 分布の分位数による計算に切り替えるよう指摘しています(AIAG & VDA, 2026, §10.3.6.5, p.124: “The approximation of the control limits using the normal distribution… should be avoided, given today’s typical use of software”)
- 適用条件:欠点が独立に発生する、発生確率が低い、検査面積/長さ/体積が固定である
適用シーン:PCB はんだ接合部の欠陥数、布地の欠点数、塗装の気泡数、鋳物のスナホール(砂孔)数。

08 単位あたり欠点数管理図(u Chart)
c 図と同じ Poisson 欠点計数ですが、検査単位の大きさが変動可能です(AIAG & VDA, 2026, §10.3.6.4, p.123)。
- u = 欠点数/検査単位数(欠点密度)であり、管理限界は検査単位数 nᵢ の変化に伴って変わります
- 従来の公式:ū = Σcᵢ/Σnᵢ;UCL = ū + 3√(ū/nᵢ)。c 図と同様に、新版では正規近似ではなく正確な Poisson 分位数を使用することを推奨しています(AIAG & VDA, 2026, §10.3.6.4, p.123)

適用シーン:面積の異なる PCB 基板のはんだ欠陥密度、長さの異なるケーブルの絶縁欠陥率。
計数値管理図の選定意思決定
| 何を監視するか? | サンプルサイズ固定 | サンプルサイズ変動 |
|---|---|---|
| 不適合品(合格/不合格) | np 図 | p 図 |
| 欠点数(各個体に複数あり得る) | c 図 | u 図 |
三、統計分析ツール(Statistical Tools)
以下の 5 つのツールは管理図ではなく、SPC の実施前後における補助的な分析ツールです。なかでもヒストグラムと正規確率プロットは、管理図のタイプを選択するための重要な前段階分析です。
09 ヒストグラム(Histogram)
連続データを区分してから棒グラフで分布の形状を表現します。区分数は Sturges’ Rule の使用を推奨します:k = 1 + 3.322 × log₁₀(n)。
- 診断機能:釣鐘型(正規)、二峰型(混入/2 台の設備の混在)、歪み型(工程の偏り)、切断型(選別後のデータ)
- 規格線を重ねると工程能力を直感的に評価できます:分布が USL/LSL の間に収まっているか
- 管理図との相補性:管理図は時系列の安定性を見、ヒストグラムは全体の分布位置と散らばりを見ます

10 正規確率プロット(Normal Probability Plot)
データが正規分布に従うかを検証する図形化ツール(Q-Q Plot の特殊な形式)で、§7.8.1 の分布評価を参照します。
- データ点が 45° の直線に沿って並ぶ → 正規;S 字状に湾曲 → 歪み;裾が乖離 → 厚い裾/薄い裾
- Anderson-Darling(裾に敏感)または Shapiro-Wilk(小標本で最良の検出力)の統計検定と組み合わせます
- 重要性:すべての Shewhart 管理図はデータが正規に近いことを仮定します。非正規の場合 → Pearson 管理図、Box-Cox 変換、またはノンパラメトリック手法を使用する必要があります

AIAG-VDA は管理図を作成する前に正規性検定を必ず行うことを推奨しており、これは管理図のタイプを選択するための重要な意思決定根拠です。
11 散布図(Scatter Diagram)
2 つの連続変数間の相関性を示します。Pearson 相関係数 r(-1 ≤ r ≤ 1)と組み合わせて定量的に評価します。
- 正の相関(↗)、負の相関(↘)、無相関(散らばりが均一)、非線形相関(曲線)
- 注意:相関は因果ではない(correlation ≠ causation)ため、専門知識と併せて判断する必要があります
- SPC における役割:品質特性 Y に影響する重要な工程パラメータ X を特定する(CTQ → CTP の連結)

12 パレート図(Pareto Chart)
Pareto 80/20 の法則に基づき、不良項目を頻度の降順に並べ替えます。
- 棒グラフ(各項目の頻度)+ 累積百分率の折れ線グラフ(累積 80% までを重点項目とする)
- PDCA サイクルにおける役割:Plan 段階でパレート図を用いて改善テーマを選択 → Check で改善前後を比較
- 応用テクニック:コストパレート図(損失金額で並べ替え)は頻度よりも経済的影響をよく反映します

13 推移図(Run Chart)
最もシンプルな時系列図表で、中央値を基準線とし、統計的な管理限界はありません。
- 連の検定(Runs Test):中央値を横切る連の数を計算し、p < 0.05 → 非ランダム
- 検出できるパターン:トレンド、シフト、周期、クラスタリング
- SPC 実施前の探索的分析に適し、研究開発/実験室環境のトレンド監視にも適しています
四、管理図選定の総合意思決定フロー
以下は AIAG-VDA 2026 イエローブックに基づいて整理した完全な選図ロジックです:
| Step | 判断する問い | 選択 |
|---|---|---|
| 1 | データの種類は? | 計量値 → Step 2;計数値 → Step 5 |
| 2 | サブグループの大きさ n は? | n = 1 → I-MR(Step 3);n = 2~10 → X̅-R;n > 10 → X̅-S |
| 3 | n = 1 のとき、データは正規か? | 正規 → I-MR;非正規 → Pearson 管理図(第三回参照) |
| 4 | 小さなシフト(< 1.5σ)を検出する必要があるか? | はい → CUSUM または EWMA(第三回参照);いいえ → Shewhart 図で十分 |
| 5 | 不適合品 or 欠点数を監視するか? | 不適合品 → Step 6;欠点数 → Step 7 |
| 6 | サンプルサイズは固定か? | 固定 → np;変動 → p |
| 7 | 検査単位の大きさは固定か? | 固定 → c;変動 → u |
よくある質問 Q&A
Q1:X̅-R 図と X̅-S 図の結果は大きく変わりますか?
n ≤ 10 のとき両者の差は極めて小さいです。しかし n > 10 では R が情報を失う(範囲は最大値と最小値だけを使う)ため、S 図の統計的効率は R 図より顕著に優れます。自動化測定システムは通常大きなサブグループを生成するので、X̅-S を優先すべきです。
Q2:p 図の管理限界は階段状ですが、どう読み取りますか?
バッチごとにサンプルサイズが異なるため、限界が n の変化に伴って変わります。実務上は「平均サンプルサイズ」で固定限界を引いた簡易版を用いることができます(各バッチの n の差が ≤ 25% のとき)が、厳密にはバッチごとに計算すべきです。
Q3:c 図と u 図はどう選びますか?
検査単位の大きさが固定かどうかを見ます。例えば同一型番の PCB(面積が固定)には c 図を、異なるサイズの PCB が混在するラインでは u 図(欠点密度 = 欠点数/面積)を使います。
Q4:ヒストグラムが二峰分布を示す場合、何を意味しますか?
通常はデータが2 つの異なる母集団に由来する(混入、2 台の設備の混在、2 つのシフトの大きな差)ことを意味します。まず層別化して分析し、根本原因を見つけてから分けて管理すべきです。二峰データに対して直接管理図を作るのは誤りです。
Q5:推移図と管理図は何が違いますか?
推移図には統計的な管理限界がなく、中央値を基準線として視覚的にトレンドを判断するだけです。SPC 実施前の探索的分析や非量産環境に適しています。一方、管理図には ±3σ の限界と異常判定ルールがあり、統計的検定による客観的な根拠を提供します。
参考文献
- AIAG & VDA (2026). Statistical Process Control SPC Manual, 1st Edition, §10.3.3 (Variables Charts), §10.3.6 (Attributes Charts).
- AIAG (2005). Statistical Process Control SPC Manual, 2nd Edition.
- Montgomery, D.C. (2019). Introduction to Statistical Quality Control, 8th Edition. Wiley.
本記事は中方科技 MiDFUNの品質管理技術チームが、AIAG-VDA SPC Manual 1st Edition (2026) の原文を解析して執筆しました。
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著者:邱培其.初版公開:2026-04-02.タイプ:品質管理コラム
原文リンク:https://www.midfun.com.tw/qc/spc-control-chart-complete-guide/
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推奨引用形式:邱培其(2026)。〈SPC 管理図 完全ガイド:8 種類の管理図 + 5 つの統計ツールの選定戦略と実務応用〉。MiDFUN 中方科技品質管理コラム。
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